テクノロジーが将来の地価、不動産価格に与える影響

2022年4月12日

2022年4月時点で都心・駅前・駅近・大規模・タワーといった地域は価値上昇していますが、今後も継続して上昇を続けるのでしょうか?私(図解太郎)なりに考えたことを書いていきたいと思います。

  1. 地価、不動産の現状
  2. テクノロジーが地価、不動産価格への与える影響

1.地価、不動産の現状

現状の理解としては、以下の認識を持ってます。

特に高度経済成長期は、大都市の中心部で働く人たちが、多く住む街として大都市周辺にある「住宅中心の都市」が栄えていった時代でもあります。東京の都心部から電車でおよそ1時間程度の範囲に、たくさんのベッドタウンができました。
今現在でも栄えているところも多いですが、有名どころだと下記のような地域があります。
 ・東京都の武蔵野、三鷹
 ・埼玉県のさいたま、草加、川口
 ・千葉県の松戸、市川、船橋、千葉
 ・神奈川県の川崎、横浜、相模原
人口集中が起こった都市の中心部から次第に周辺に移り住んでいく、いわゆるドーナツ化現象が進んでいった時代です。円形が次第に大きくなっていき、1時間半~2時間かけて通勤してるサラリーマンもザラにいました。

これに対して、都心への回帰が逆に進んでいるのが現状ではないでしょうか。
その代表格であるタワーマンション(通称タワマン)は、都心部がこれまでのように円形に拡がっていくのではなく、垂直に伸びていくイメージを持ってます。

これにより、
 ・都心部へのアクセスが容易
 ・充実した共用施設・商業施設
 ・高いところからの眺望
 ・投資としての価値
といったメリットのある場所に住むことができる人が増え、現在の人気が生まれていると感じます。
これらの都心部の居住者で特に増えていっているのが共働き家庭です。夫婦二人で都心部に勤務している場合、子育てや通勤の利便性が高い地域に住むメリットは大きいのだと思います。

折れ線グラフ。グラフデータは「表 専業主婦世帯と共働き世帯(Excel)」を参照。
図12 専業主婦世帯と共働き世帯|早わかり グラフでみる長期労働統計|労働政策研究・研修機構(JILPT)

これらタワーマンションを筆頭にした新築マンションが都心部の不動産価格を引き上げ、新築マンションの平均価格も過去最高を記録しています。

首都圏1都3県の新築マンションの平均価格は6260万円で過去最高を更新、東京23区の新築マンションの平均価格は8293万円

不動産経済研究所、2021年調査

テクノロジーが地価、不動産価格へ与える影響

この傾向は今後も続くのか?ということを考えてみました。マクロ環境(外部環境)を分析する古典的ツールであるPEST(政治、経済、社会、技術)で土地の価格に関して整理してみたのが以下です。
私なりに気づきがあったのは、これまでは政治、経済、社会が比較的土地価格をきめる中心だったが、今後は技術(テクノロジー)の影響も高まっていくのではないかということです。


日本の取り組みは、諸外国に比べて既に周回遅れじゃないかと思えるくらい遅れていますが、スマートシティ、スーパーシティの取り組みです。スーパーシティは、大阪市とつくば市が内定しましたが、これ以外の地域でもデジタル田園都市国家構想などで全国に展開されていくし、今後増えていくものと思います。ここでは、その詳細には触れませんが、どこの地域の取り組みにも、ほとんど自動運転が入っていることに注目してみてください。

この自動運転が実現した後の世界はどうなるのかというと、誰もが、いつでも、どこからでもパーソナル空間となる車(未来は車と呼ばないかもしれないですが、一旦車としておきます)に乗り、目的地まで自動で運んでもらうことが出来るのです。また、人だけでなく空いているスペースに荷物を積んで物流を担うことも可能となります。今の自動車は平日や夜間に稼働してないことも多いですが、自動車がシェアされることにより、無駄がなくなり、結果、環境にも優しいし、コスト面でもメリットを創出できるのです。これらを支えているのが自動車の自動運転技術の向上や5Gの普及になるかと思います。

では、これが住宅価格にどう影響するか考えると、現在は路線価ありきで、いかに駅から近いかがの価格に及ぼす影響が大きい(駅から徒歩○分とか)ですが、自動運転化が進むと、(家まで自動に車が迎えに来てくれるので)電車に乗る必要性・必然性も薄れるため、駅からの距離によって高騰している土地、不動産の価格が相対的に落ちていくことが予想されます。また、常に車が全自動で稼働し続けるため、今ほど駐車場は必要なくなり、その分の土地がも市場に出てくるはずです。

つまり、魅力的な人や商業施設、ビジネスが集まる都心であることの価値は依然として残ったとしても、住むのは、必ずしも「駅近」じゃなくも良いのです。この場合、都心や都会だけれども駅から少し遠くて価格が比較的抑えられている地域に注目が集まるかもしれません。逆に「駅近」がウリのタワーマンションなどは、エレベーターで1階に降りるまでの時間が長かったりする場合、価値が落ちてしまうかもしれません。

また、メタバース、ARの進化も見逃せません。Google、Microsoft、メタ(旧Facebook)などの巨大IT系企業がこぞってメタバース、NFTなどに集中投資し始めてます。メタバース化が進めば、今までリアルな空間で出来ていたことが、バーチャルな空間でもリアリティを以て実現することが出来る様になるのです。メタバース空間上では、過去のアーカイブを取ることにより、時間を超えることもできるし、メタバース内の記録を取ってAIに学ばせ、AIを加速度的に進化させて利便性を高めることもできるのです。

三越伊勢丹がバーチャル空間上に百貨店を既にオープンしているように、今後はEC、アプリでの購買を超え、より現実に近い、さらには、現実を超えた購買体験がメタバース空間上でできるようになっていきます。
今は駅を中心に商業施設を作り、人を集めていますが、リアルとバーチャルの境目が曖昧になることにより、リアルな店舗の意味はどんどん薄らいでいきます。そして、これは田舎に住んでようが、都会に住んでいようが同じ経験が出来るという意味で距離すら帳消しにします。バーチャル空間では地元のイオンモールしか選択肢がないということもなくなるのです。

そして、バーチャルな空間には場所の制約もないので、自分の好きなブランドで固めた巨大なモールを作ることもできるし、だれか(好きなアイドルとか、デザイナー、インフルエンサーとか)がキュレーションした違うモールに即座に飛べる様になります。結果、「地元の駅ビルには、あの店がない」ということもなくなります。
こうなったらリアルな商業施設も今ほどの数はいらなくなることも予想され(それは潰れていくことを意味します)、商業施設が近くにある、それ故に人が集まっている「駅近」の価値は自動運転と同じ様に相対的に落ちてくのではないでしょうか。

さらに、(ここまで来ると妄言に近いのですが)今やイーロンマスクもジェフベゾスも宇宙事業に力を入れています。もしも、地球以上に住みやすい星が見つかり、移住が容易になったら地球の土地は下がるのではないでしょうか。これはレアメタルでも同じことが言えます。金やダイヤモンドも有限であるからこそ高いのです。土地も限られているからバリューがありますが、地球の人口に比して広大な土地(星?)が新たに出現したとき価値はどうなるのか想像してみてください。